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映画『バべットの晩餐会』その3

シネセゾン刊、岸田今日子訳

『バベットの晩餐会』より

バベットのメニュー、私の深読み」食文化研究家・

本間千代子さんの章から

・・・原作者のアイザック・ディーネセンの作品

は、「絵をみるときのように、からだを引いて全体を見渡すと

一切の意味が明瞭になる」という人がいる。この映画に登場

する食卓もまた、全体を包む大きな構図の中で眺めた時、「

若き日にエロスを奪われた女」としての著者の人生に思いい

たり、私には料理と銘酒の数々の持つ象徴的な意味が謎解

きのような面白さでつたわってきたのだった。

 ディーネセンはこの短編を1940年代にアメリカの読者に向

けて書いたといわれるが、当時のアメリカでここに出てくる料

理のロマンを楽しんでくれた人々は、おそらく今の日本よりも

数少なかったと思う。その意味で彼女は、自らの愛した人々

と同じように「生まれ合わせた世紀に帰属できない」女だった。

 まず、晩餐会はシェリーのアモンティヤードと海亀のスープ

ではじまる。アモンティヤードはフィノよりも香りにすぐれ、ナッ

ツのように複雑で芳醇なコクがある。スペインはアンダルシア

の南、へレスで醸造され、イギリスに運ばれる。フィノより樽熟

成の期間は長く、したがって甘くなりがちだが、ドライのアモン

ティヤードこそはもっとも貴ばれるシェリーで、東京では最近ま

で(1988年の執筆時)なかなか出合えなかった。(※現在、楽天

で最も高価な30年物は4,980円で売り切れ中)

海亀のスープについては、シェリーが英国の上流社会の酒で

あったように、もともとはアングロ・サクソンの料理だった。・・・

海亀の漁場は主に西インド諸島のあたりだったといわれる。そ

のせいかスープにはかならずシェリーかマデイラを加える。相

性がよいとされてていたのだ。

 味わいを楽しむことは神の心に背くとお互いを戒めあってい

たプロテスタントの信者たちは、このあたりから微妙に表情が

ほぐれていく。そんな雰囲気の中で供されるシャンパンのヴ―

ヴ・クリコ・ポンサルダンとフレッシュ・キャヴィア・ドゥミドフ風の

組み合わせもまた一筋縄の発想ではないと思う。

 キャヴィアは19世紀フランスでも豪華な食事に欠かせない一

皿だったが、カスピ海、黒海産のものが最上等といわれる背景

から、多くの場合、東欧、ロシア流にブリニスというそば粉のク

レープとの相性が一番とされてきた。(キャヴィアは)色の薄い粒

の大きいベルーガが最も高価でおいしいことはよく知られている

が、実はさらに高価なコチョウザメの子、ゴールデン・キャヴィア

がこの世の中には存在し、帝政ロシアの頃はすべてツァーに献

じられ、スターリン時代には彼とイランのシャーが分け合った問

い伝説があるが、現在では年に20キロもとれない。<さらに続く>

 

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