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水戸・下市のお祭り②

朝日新聞東部販売所・地域情報紙11/20号掲載

「昭和30年代のお祭り②」

 今回はお祭りには欠かせない露天商のお話しを。現在の下市

のお祭りにはみられなくなってしまったものに、「飴(あめ)屋」

があります。ねじり飴やぶっかき飴などいろいろな飴がブリキ

の大きなバット(角型の容器)に並んでいました。「飴細工」

べっ甲飴細工は銅版の上へ、温めておいた銅製の急須の様な容

器の口先から一筆書き風に溶けた飴を垂らし文字や動物の形を

描き、冷めて硬くなる前に割り箸の様な持ち手を落とし、ヘラ

ではがせば出来上がり。彩色する飴細工の方は今やパティシエ

の領域で、材料こそ違え「お新粉細工」に出来栄えは似ていま

す。「針金細工」も今やワイヤークラフトとして、ネットには

たくさん作品が並んでいて、売っている場所が変わっただけの

ようですが、昔はみんなお祭りの大切な脇役であり、子どもた

ちにとっては祭りの時にしかみられない、もの珍しいものでし

た。それに映画『フーテンの寅さん』シリーズで渥美清の演じ

た車寅次郎のような香具師(ヤシ、矢師、的屋・テキヤ)のお話

しも小々。現在の吉田神社の秋季例大祭は、第2土曜日の午前

9時に神幸祭の行列が神社を出発してしまえば、神社の境内は

ひっそりと静かになってしまいますが、私が小学校の頃、昭和

30年代の1015(毎年15-16日に決まっていた)に、神社下の

鳥居の傍で子ども心に忘れがたい香具師(やし)のおじさんの話

を聞いた記憶があります。それは漫談のような話をする香具師

のおじさんで、子ども心を掴んで離さない話術にすっかり嵌っ

てしまいました。それであくる年の18日のだるま市の時にも

そのおじさんがいないか楽しみで、現在のハミングロードの露

天商の中を探しまわったものでした。彼は何を売っていたのか

と言えば、口の中に含んでプープー、ペーペーという草笛のよ

うな音の出る小さな笛のようなものを商っていたのです。おじ

さんが話の途中に入れる「プープー、ぺ-ペー」という合いの

手や台詞代りの擬音がまた滑稽で面白くて笑ってしまいます。

おじさんの周りはいつも30人ぐらいの子供が取り巻いていて、

その輪の中に入り込むのも簡単ではありませんでした。それ

ほど子どもたちを愉快に面白がらせてくれるのに、香具師

(やし)のおじさんは高価なものを商ってもいないし、周りに

集まった子供たちに強引に売りつける事もしないんです。現

に私なぞ何回かのお祭りにそのおじさんの面白い話を聞かせ

てもらったのに、一度もそのおじさんから笛らしきものを買

った記憶がありません。そんなお人好しの香具師(やし)のお

じさんは漫談家にでも出世したのでしょうか、いつの間にか

姿を見せなくなってしまいました。二つ目の記憶は、「ガマ

の油売り」ならぬ「蛇(蝮・まむし)の油売り」です。この香

具師(やし)は巧みな濁声の話術を使い、怖いもの見たさの見

物人を焦らしに焦らしながら、布袋の中から蝮の様な蛇をつ

かみだしこれ見よがしに見せつける事から始めます。この蝮

だかハブだかわからない毒蛇の毒からつくりだした軟膏が、

それこそどんな切り傷、火傷にも即効でおまけにシミ・黒子

(ホクロ)までとってしまうという万能薬なわけです。見物人

は話半分よりも信用していないのでしょうが、香具師がやお

ら刃物を取り出し、己が腕をまくって傷跡の何本も残るその

二の腕に刃物を直角に切りつけますともういけません。血が

滴り落ちるところまでみせられては、みている方は目が点に

なりもう真剣そのものです。その時香具師はその切り傷に素

早く商売道具の軟膏を塗りつけ、布で傷を押さえ、「はいど

うぞ!」とばかり血の止まった傷口をみせれば、「さあ買った

買った、切り傷の特効薬!200!」とばかり販売に入ります。

私が最後にこの香具師(やし)の口上を聞いたのは昭和4243

年頃、上野の不忍池にあった弁天様の境内でした。

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